「小イワシがあるけれどやるかい?」
明け方、網代の仲買さんから一本の電話が入った。
当店がイワシを買い付ける際の決め手は二つ。『大きさ』と『脂の有無』だ。
現物を見ることができないが、電話のやりとりから第六感を働かせて、「○○キロを〇〇円で指して!」と入札に参加する。
30分ほどで「買えたよ」との連絡があり、急いで網代へ。
いつものことだが、この仲買さんの魚に対する取り扱いの丁寧さには感心させられる。今回もイヤッていうほどの氷で〆てある。
網代まで往復1時間。作業場に戻ればここからは時間との闘いだ。
〆てあった氷を省きながら、うるめイワシと背黒イワシの振り分け。
そして、感触を頼りに、今朝のイワシに適した塩汁の濃度を決めながら漬け込む。
日照時間も考慮しながら、この振り分けと漬け込み作業を同時に行っていく。
経験とは不思議なもので、氷の冷たさで殆ど指先に感覚はないが、手と目は勝手に働いてくれる。
作業場の前をたまたま通りかかったお客さんから、何をしているのか尋ねられた。振り分けの説明すると「これは手間だね…」と一言。
しかし、この振り分けをしっかりとやっておかないと、後工程で倍以上の時間がかかってしまう。決して手は抜けない。
そして天日干し。
夏場はよく乾きそうだというイメージを持たれるだろうが、気温と湿度が高くて納得するものを作るには、厳しい季節だ。
とはいえ、どんなに優れた乾燥器を使っても、この丸干しだけは、『天日干し』には勝てない。
ぜひ、この時期の丸干しを味わって頂きたいものです。
うるめイワシ/せぐろイワシの丸干し